高水山獅子舞写真集(平成17年4月10日 高水山常福院にて)

高水山古式獅子舞写真集

※女獅子隠しのうちの2枚の写真は平成16年の揃い(麓の常福院)より
解 説
写 真

 不 動 堂   (ふどうどう) 
 秩父の武将 畠山重忠はこの不動を深く崇拝し、1203年に不動堂を 再建したが再三の山火事のため炎上し、現在の不動堂は1822年に建てられ たものとのことです。
 平成15年に不動堂等の改修工事が完成しました。                                                                                               

不動堂1
不動堂2

  宮 詣 り (みやまいり)

 獅子舞奉納に際し獅子をはじめ関係者一同が不動堂に参拝します。
 渡り拍子(道中笛)の調べにのって獅子行列は不動堂の前に一列に並び ます。
最初のお参りでは獅子の水引き幕があがっているため獅子舞役者の素顔が 見られます。
二周目のお参りでは笛(曲)がブッ揃えの笛に変わり、獅子は水引き幕を おろします。ここで大太夫(黄金色の獅子)、小太夫(黒色の獅子)、女獅子 (赤色の獅子)の獅子頭がそれぞれ現れます。
三周目の時には笛(曲)が御幣懸の出始(デハ)の笛に変わり獅子が狂い (舞い)始めます。この笛(御幣懸の出始(デハ)の笛)はここでしか使われ ませんが、とても魅力的な旋律をもつ曲です。獅子舞役者らもいよいよ獅子の 世界に没入していきます。

宮詣り
宮詣り行列
宮詣り1周目
宮詣り3周目

 御 幣 懸 (おんべいがかり)

 宮詣りに引き続いて御幣懸が奉納される。宮詣りおよびこの御幣懸 は、宗教的儀礼的な面があり、狂い手(舞い手)は獅子舞役者の中でも上級の 役者が演ずる。(その中でも大太夫(黄金色の獅子)を演ずるものがその年の 最高位の獅子舞役者であり、本来はこの役を終えて晴れて20年にもおよんだ 現役生活を引退したものであった。)(人口減の現在ではOBになっても獅子 舞に加わっている。)
 お宮詣での際に何か光る物体が落ちているのを女獅子が見つけた。
小太夫がおそるおそる近寄ると、その本体が神聖な御幣であることが分か った。
小太夫(黒色の獅子)と大太夫(黄金色の獅子)はどちらが祈願するかを 巡って争うが大太夫が勝ち、代表して御幣に悪魔退散の祈願をする。
 獅子たちは御幣のまわりを取り囲み、舞い回りながらみんなで祈願す る。

(大太夫が御幣に祈願するときの所作がなかなか難しいと聞いたことがあ ります。)

お宮詣での際に女獅子が光る物体を見つ
けた
大太夫と小太夫が争ったあと大太夫が代表
して祈願する
大太夫による祈願
三匹がそろって舞回りながら祈願する
三匹による締めくくりの舞

 花  懸 (はながかり)

 若い三匹の獅子が花見に出かけ、牡丹の花の美しさに酔い、花を 散らさんばかりに優雅に舞い遊ぶ。
 この庭は、初心者(1年目〜3年目の役者)が狂う(舞う)演目であ り、ササラの初心者もこの庭から始める。
高水山ではこの演目のみ道化が登場する。道化が獅子と同じ動作で舞って いるので、獅子の真似をしていると思うかも知れないが、実際には初心者の獅 子をOBや上級役者の演じる道化が教え導いているのが真相である。

花懸のデハ
花を愛でる獅子
道化による指導

 三 拍 子(さんびょうし)

 若い三匹の獅子たちが広い野原に出てきて元気に舞遊びますが、 遊び疲れて寄り添って寝入ってしまいます。一眠りした獅子たちはまた元気に 拍子を揃えて楽しく舞い遊ぶという演目(庭)です。
他の庭は、演じる獅子の役割によって舞が異なりますが、この庭では三 匹とも拍子を揃えて同じ動きをします。これが三拍子の名前のいわれかと思わ れます。
 演目の組み立てられ方が他と異なりますが所作も特徴的なものがいくつ かあり、最初の方で獅子たちがバチを頭上にかざしてカチカチとうち鳴らしま す。また、三匹が寄り添って寝入ってしまう場面もあります。このとき歌われ る獅子舞唄は子守歌のようにも聞こえますが、次の場面転換のきっかけともな っています。役者は獅子をはじめて4年目〜6年目くらいの20歳〜22歳頃 の青年が演じます。
 ササラ摺りは少し難しく重要な役割を演ずるため上級者が行います。

トッピッピーという笛に合わせて頭
上でバチを打ち鳴らします
広い野原に出てきた若い獅子たちは、
元気よく遊び回ります
遊び疲れて寝入ってしまいます

 竿  懸 (さおがかり)

 獅子たちが山を進むうち、目の前に行方をさえぎる倒木があらわれた。
向こう側に行くのに困り、三匹が相談し、まず女獅子が様子を見ることになった。
女獅子は二度三度と倒木にかかるうちに、やっとのことでこれをくぐり抜けることが出来た。
次に小太夫が挑戦する。最初はなかなかうまく行かなかったが、女獅子の誘導でやっとのことでこの大木をくぐり抜けることができた。
後に残された大太夫は怒り暴れこれを押し渡ろうとするが難渋する。しかし、女獅子の誘導で無事にこれをくぐり抜けることができた。
最後は大太夫がこの大木を取り除き、三匹が仲良く舞い遊ぶ。

 この演目は、人生の中で必ず遭遇する試練を乗り越えるという意味があるようです。 獅子舞役者は7年以上のベテランが演じるため、見応えがある場合が多い。
 (昔は竹に激しく懸かり、これをへし折る獅子もよくいた。)              

行く手をさえぎる倒木を見に行く女獅子
倒木の様子を仲間に伝える女獅子
倒木を渡ろうとする女獅子
女獅子の誘導により倒木を渡る小太夫
次は大太夫が倒木にかかる
女獅子の誘導により倒木を乗り越えようとする大太夫
苦難を乗り越え、三匹が仲良く舞い遊ぶ

 女獅子隠し(めじしがくし)

  男女の三角関係、恋の葛藤を表す演目です。
 三匹の獅子たちを突然の濃霧が襲い、女獅子がはぐれてしまいました。
大太夫、小太夫が相談し、それぞれ女獅子を探し回ったところ、小太夫が先に女獅子を見つけ出しました。小太夫は女獅子を連れ帰り、自分たちの巣をかまえてしまいました。
 そうとは知らない大太夫は女獅子を探し回りますが、なかなか居所がつかめません。しかし、ついに小太夫と仲良くいるところを突き止めました。
 大太夫は、小太夫の油断しているすきに女獅子を連れ出そうとしますが、小太夫に未練を残す女獅子はなかなかなびきません。途中まで苦労して連れ出しても、すぐに小太夫の元に逃げ帰ってしまいます。
 しかし、何回も執拗に誘い出しをかけているうちに、ついに女獅子の心が大太夫になびくようになります。大太夫と女獅子は互いに仲良く回転しながら舞った後、庭場の反対側に自分たちの巣をかまえます。
 その後、大太夫は独りぼっちになった小太夫を「ざまあみろ」と脅しにいきます。小太夫は意気消沈してしまいます。 なかなか立ち上がれませんが、それでもしだいに元気になり、今度は大太夫たちの居所を突き止めようと探し回り始めます。
 (この後、大太夫と小太夫で立場が入れ替わるが、同じ展開があります。)
 小太夫が女獅子を連れ出した後、いよいよ大太夫と小太夫がケンカを始めます。このとき、女獅子は庭場の中央で花笠に囲まれます。
 大太夫、小太夫のケンカを見かねた女獅子は仲裁に入り、三匹の獅子たちは再び仲直りして楽しく舞うようになります。

(6つの演目の中で一番長く、約70分間を要します。大丹波や下名栗ではさらに長く、2時間を要します。
  またこの演目は獅子舞役者にとって一番やりがいがある演目だそうです。獅子の気持ちになりきって狂って(舞って)いるそうです。) 

小太夫が自分の巣に女獅子を連れて行く
女獅子を探し回る大太夫
小太夫と女獅子の居場所を徐々に探し当てる大太夫
小太夫のようすを窺う大太夫
大太夫が誘ってもなかなかなびかない女獅子
小太夫を脅す大太夫
意気消沈する小太夫
連れ去られた女獅子の居場所を探し回る小太夫
大太夫と小太夫のけんか

 太刀懸(白刃)(たちがかり,しらは)

  真剣を使って悪魔払いの祈願をする舞である。
 獅子たちの前に刀を腰に差した二人の太刀遣いが現れた。獅子たちは太刀遣いの腰に差した刀に興味を引かれていく。太刀遣いは最初は左手に椿の花、右手に手ぬぐいを持って獅子を囃し、次に手ぬぐいを両手に張って獅子を囃す。その後、手ぬぐいを頭に鉢巻きにして、刀を鞘ごと腰から抜き差ししながら獅子を囃す。獅子たちは刀が欲しくてたまらなくなってくる。
(真剣を抜く前に、舞いが事故無く行われるよう保存会長が塩花で庭を清め、獅子や太刀遣いも無事にできるよう自らを塩で清める。)
 この後、ついに刀が抜きはなたれる。
太刀使いが獅子の眼前で、刀を右から左、左から右に数往復して足元から胸元まで切る真似をする。挑発された獅子は我慢しきれず、太刀使いの胸元に飛び込み、刀を翻している腕にしがみつく。そして、太刀使いは頭上に刀を翻しながら獅子と庭場を往復して舞う。
 執念深くつきまとう獅子に、太刀使いはついに斬りかかる。このとき、獅子頭の頭上すれすれに刀を振り抜き、獅子頭の頭髪である羽の先が切り落とされて庭場に舞い落ちることがある。(平成17年祭礼では二枚舞い落ちました。平成18年祭礼では小さい羽を合わせて十数枚が舞い散りました。)
 太刀使いは、素早い獅子の動きに今度は柄と刀の中ほどをもって獅子を追い返す。
 しかし、いくら追い返してもあきらめない獅子の執念に意気を感じ、太刀使いはついに獅子に刀を預ける。
獅子は刀を口にくわえ大喜びで舞い狂う。二匹は互いに接近して刀を見せ合い、「自分の方がよい」「いや、自分の方がよい」と自慢しあいながら舞い狂う。

( 多くの獅子舞では真剣と称していてもほとんどが刃を落としている。しかし、高水山と下名栗では切れ味鋭い本物の刀を使っている。したがって、獅子頭に刀を取り付けるわけにはいかず、水引幕越しに舞人が自分の歯で直接くわえている。このことにより、獅子どうしの刀の見せ合いも、かなり接近して行うことができ、より迫力に富むものになっている。
 また、太刀使いと獅子のちょっとした所作の間違いで大怪我をすることになるので、練習に練習を重ねて祭礼に臨んでいる。最後のトリを受け持つ演目なので、獅子も太刀使いも熟達した上級の舞い手が演じており最大の見せ場である。)

太刀懸のデハ
手ぬぐいと椿の花を持って獅子を囃す
刀を抜き差ししながら、獅子に見せびらかす
真剣を抜く前に、事故無く安全に舞ができるよう塩で清める
白刃をかざし獅子を挑発する
刀が欲しくてたまらない獅子はついに太刀使いにしがみつく
しつこい獅子についに斬りかかる太刀使い
羽先を切る太刀使い
執拗に刀を欲しがる獅子
太刀使いは違った趣向で獅子を追い返す
獅子は刀をくわえ喜んで舞い狂う
互いに「自分の刀の方が良い」と自慢しあって接近して舞い狂う

 記念写真(きねんしゃしん)

 御幣懸が終わった後、関係者が全員揃って記念写真を撮っていました。私は生家を離れて30年以上もたってしまっているので、知っている人はあまり多くありません。しかし、兄や幼なじみの人に聞いてみて、誰がどこの家の方なのかをだいたい分かるようになりました。 この写真には下名栗獅子舞保存会の代表の方が一緒に写っています。(会長さんだと思います。)高水山から下名栗に獅子舞を伝授した(約200年前)ときからの交流が続いていることに大きな意義を感じます。

記念写真

 篠  笛(しのぶえ)

 自作の「古典調五本調子の笛」を7管ほど3月上旬に送りました。「使えるものがあったら使って下さい」と申し添えておいたところ、すべての笛にもらい手があり安心しました。
 使い心地を聞いたところ、悪くないとのことで、中には市販のものより吹きやすいと言ってくれた方もいました。
 写真の笛吹の方の何人かは、私の作った笛を使って下さっていました。

奉納 篠笛一式也
笛吹の方々

 幟旗と万灯 (のぼりばたとまんとう)

 写真ではわかりにくいですが、幟旗は江戸時代に作られた立派なものです。
 万燈の花やササラ花、その他は、前日の揃いの時に氏子の人たちが作ります。
 この花は祭礼が終了した時点で見学者に配られます。私も幣束と何本かの花をもらい自宅に飾っています。

幟旗と万灯
花と幣束

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